聖山ギルナールを下山。さらば僕が愛したニューバランスよ「西インド聖地巡礼の旅その4」

西インドはグジャラート州のジュナーガルという小さな町にそびえる聖山ギルナール。僕らは、朝4時から6時間かけて9999段の石段を登り、山のてっぺんにある寺院で礼拝させていただきました。

滞在時間わずか3分・・

日本人の感覚だと、景色を眺めたり、休憩したりするのでしょうが・・ そうなんです。

頂上の寺院にはお茶を飲みながら休憩する場所はおろか、瞑想する場所さえなく、無情にもすぐ靴を履いて、降りしきる雨の中・・9999段を降りることになったのでした。

ギルナール山を下山した僕らはジャイナ教の聖地に参拝。

遥か昔のこと、破壊の神シヴァが14年間、食事もとらずに瞑想をつづけた場所と言われるギルナール山の頂上。6時間かけて登り、ダッタトレーヤを祀る寺院内で10秒ほど黙想し、降りつづく雨のなか、登ってきたルートを引き返すことになったのです。

石段の登山は下りのほうがキツイのです。

下りは楽だろうと、階段登山を甘く見ていた僕。実際のところは、9999段にもなると膝と腰にかかる負担がきつかったのです。さらに雨の影響で石段が滑りやすくなっていて、一歩間違えれば崖下に転落・・なんてこともあるので、慎重に下りていきました。

上の写真は中腹にあった休憩所。お菓子と水、あと簡単なお土産を買うことができます。

ちなみにお菓子はひと袋10ルピー(17〜18円)、水は1.5リットルで30ルピー(51〜55円)です。前の記事にも書いたように、重さがある水は持ってこなくてもルートに数箇所ある売店で買うことができます。ギルナール山で行き合ったインド人たちはとにかく陽気でフレンドリーでした。

田舎に来ると僕ら日本人が珍しいのでしょうか。

登山中に写真を一緒に撮って欲しい、と7〜8回頼まれては、有名人になった気分で応じていました。その度に、元気を注入にしてもらい、彼らのおかげで楽しい登山になったのです。下山中もずっと雨に降られ、カッパを忘れてきた僕は「煩悩が洗い流されますように」とひたすら祈りながら一段一段下りていったのです。

上の写真はこの登山中、一瞬だけ雨がやんで、雲が途切れた時に撮影した貴重なものです。

ジャイナ教の5大聖地で礼拝。

下から数えて4000段付近にあるジャイナ教の寺院群。

休憩をかねて参拝です。外国人や異教徒でも自由に参拝することができるピースフルな寺院です。見事な彫刻がほどこされた寺院。礼拝、そして瞑想をさせていただきました。

日本でも同じですが、寺院内では基本的に撮影は厳禁になっています。お金を払うと撮影できる寺院もありますが、内側に意識を保つためにもスマホは持ち歩かないほうが、良い時間が過ごせます。日常という非現実から、聖地のエネルギーによってリアルな自分に戻ることが目的ですから、デバイスは意識を濁します。

ジャイナ教とは?

紀元前5〜6世紀頃、マハーヴィーラ(ヴァルダマーナ、)を祖師と仰ぎ、特にアヒムサー(非暴力)の禁戒を厳守するなど、その徹底した苦行・禁欲主義をもって知られるインドの宗教で、戒律の厳しさは他の宗教の比ではない。1.生きものを傷つけないこと 2.虚偽のことばを口にしないこと 3.他人のものを取らないこと 4.性的行為をいっさい行わないこと 5.何ものも所有しないこと

たとえば会社で上司から不条理なことで怒られたとしましょう。ジャイナの教えでは、居酒屋で上司の悪口大会をすることも、さらに心の中で「上司のバーカ!」と思うことすら禁止されています。

ジャイナ教徒は身分が上がれば上がるほど、ルールも厳しくなり、街に出ると虫を踏んでしまう恐れがあるので、買い物は使用人がしたり・・さらに、身分が上がると、食べ物を食べることも殺生にあたるということで、最終的には断食して餓死することを許される・・的な、そんなすごい領域まであるようです。

「この世は幻であり死後がリアルである」という世界に精神がたどり着いた者だけが、それを実践できるのでしょう。そんな人々が日々礼拝をしている寺院ですから、空気感がおそろしく静かで凛としていました。そんなエネルギーに満ちた空間で瞑想するわけですから、煩悩の塊である僕でさえ、波音ひとつ立たないくらい静かな気持ちになりました。

さらば僕が愛したスニーカー。

日本を出発する時に、このスニーカーをギルナール登山を最後に引退させると決めていました。

およそ5年ほど前に、ジョギング用に買ったニューバランス。履き心地とフィット感は最高で、このモデルを3足は買っておきたかったと後悔したほどです。たくさんの思い出が詰まったこのスニーカーですが、底が擦り減ってしまい、ジョグには不向きになってしまいました。

聖山ギルナールを下りて町のホテルに戻った僕は、ずぶ濡れになったスニーカーを脱ぎ・・そして、さよならしました。早朝4時、ホテルを出発したのが遠い昔のような感覚。

午後2時半・・

登山後の食事は、ホテルのレストラン「MACHAN」にて。塩味の野菜スープ、ビリヤニ、ポテトと香草の炒め物、マンチュリアン。野菜だけの素朴な食事も、往復19998段を制覇した後だけに、とびきりのご馳走でした!

美味しいご飯をたべて間もなく、僕たちはさらに西を目指し旅立ちます。

それでは皆さん、よい旅を!

Have a good trip!

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。