自然界のリズムが狂い始めているのかと思いたくなるくらい、秋が深まっても半袖一枚で過ごせる日がつづいていました。およそ半年ぶりとなる自由が丘へ訪れたこの日も、雨こそ降っていたものの、2016年の夏、ヘビーローテションで着ていたシディアス卿*のTシャツでお店に到着した次第です。
*映画スターウォーズに登場する銀河帝国皇帝の暗黒卿。
フランス語表記の「L’aterlier de véganique」(2021年現在Plus véganique)はラトゥリエ・ドゥ・ヴィーガニックと読み、自由が丘の住宅街にOPENしたばかりのヴィーガン料理店です。上の写真は入り口のドアに書いてある店名なんですけど、ところがこれリニューアル前のままなのです。
事実、この店をfacebookやブログで紹介している記事のほとんどが”maison de campagne”になっていたりします。でも実際のところは”véganique”なんですよね。
どうしてなのか?
あるイタリア人の偶然と直感によってこの物語は始まった。
それにはとても面白いバックグラウンドがあるので後ほどお話しましょう。イタリア出身オーナーと軽井沢から帰還したイタリアンシェフ。
この店を語る上で、絶対に外すことができない人物がふたりいます。
加藤シェフと、オーナーであるイタリア出身のロシャン・シルバ氏です。シルバ氏の経歴が映画の主人公のように個性あふれるもので、氏の著書から引用させてもらうと「イタリア生まれ。スイスの高校で建築を学び、16歳でホテルの設計を手掛ける。イタリアの大学にて経営学を専攻。
卒業制作で3か月、イタリアのPaviaへ。トウモロコシ畑に囲まれた古い家で、80歳のノンナ(おばあちゃん)と共に暮らす。毎日森でリンゴを採りケーキを作り、何もゴミを捨てない静かな生活に感銘を受ける。その後テキスタイルメーカーに入社。20歳で独立する。日本にも卸先が複数あったため、輸送コストなどを考え日本支社を作ることに。
偶然旅行した先の鎌倉極楽寺で、現在のla maison ancienneである古民家を見つけ、即決。
サイドビジネスとしてカフェを始める。
そんなシルバ氏は現在、鎌倉と中目黒、そして自由が丘にカフェを持ち、自分で店舗設計とインテリア をデザインし、さらにはアパレルブランド「THE FACTORY」を立ち上げ、これも自らがデザイナーを 務めるなど衣食住のすべてで才能を発揮しています。
そして今回、自由が丘のカフェ「L’aterlier de maison de campagne」をリニューアルするにあたり抜擢されたのが、この夏まで軽井沢で話題を振りまいていたカフェ「RK GARDEN」を切り盛りしていた 加藤シェフです。
▼加藤シェフ初のヴィーガン料理は軽井沢のRK GARDEN
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パーティ料理のシェフが突如としてヴィーガン料理専門店をOPEN
加藤シェフとは僕が横浜でパーティの企画&サーブの提供をする仕事をしていた時の仲間で、彼が軽井沢のブライダル会社へ移籍後に立ち上げたレストランは、料理の旨さもさることながら、お店の開口部にいっさい窓ガラスがない、つまり自然と一体化した大胆な作りなどで評判を呼び、またたく間に軽井沢のメジャーシーンに躍り出ました。
季節は秋になり、ひと段落したところで再び地元横浜へ戻ってきて、軽井沢の繁忙期を乗り切った疲れもあり、夫婦で少しのんびりしようと思っていた矢先に、以前から交流があったシルバ氏から突然の電 話があり「うちのカフェをリニューアルするからシェフをやって欲しい、今すぐに」と無茶振りとも言える依頼にOKするための加藤シェフからの条件が”ALL VEGAN”だったのです。
お店の名前が以前のままであったのは、オーナーさんとシェフの素早い決定から3週間も経たない間にとOPENした・・という経緯があったからなのでした。
“Véganique”という言葉に加藤シェフの明確な生き方があります。 “穀物と野菜”だけで作る加藤シェフの料理をひと言で表現するなら「リッチ」という言葉がしっくりきます。肉や魚、高級な食材をいっさい使っていないのに、です。
では、リッチという感覚がどこから来るのかというと、まずは注文した料理が目の前に登場した時の”ビジュアル”にヤラれるでしょう。 パーティ料理を作っていた時代、期待を抱いて会場に入ってきたお客さんたちに、大きなインパクトと高揚感を与えるために工夫の限りを尽くしてきた加藤シェフならではの”装飾”のセンス。
つまりは、料理を”華”として日々扱ってきた者にしか到達できない視覚的な彩りのマジックを加藤シェフは使うことができるのです。 「Véganique-ヴィーガニック」という名前は、25年以上ものあいだ料理界の第一線で仕事をしてきたシェフが、信念に基づいてこの道で行くと決めたVegan+Organicと、全面的にシェフをサポートしている奥様が追求している”macrobiotique-マクロビオティック”が融合したものです。
多忙な軽井沢の日々で疲れた身体を休める間もなく、シェフの決定に従いお店に入った奥様。不思議とその表情は活き活きとしていて、エネルギーに満ちていまいた。
そういえば何年か前に体調を崩した加藤シェフを、体質改善のためにベジタリアンへと導びいたのが奥様だった、ことを思い出しました。興味深いことに、シルバ氏の奥様もヴィーガンレストランにリニュー アルしたことを歓迎しているという話をうかがったのです。
表舞台で戦っている主人たちを、しっかりと裏で支える奥様の存在があってこそ、このお店が自由が丘に出現したのだと、珈琲を味わいながらしみじみと思ったのでした。 ここまで読んでくれたらなら「L’aterlier de véganique」には、ぜひ大切なパートナーを連れて出かけてみてください。
調和のとれた静かな空間で、美味しいヴィーガン料理を肴にお好きなオーガニックワインを一本開けてみるのもいいでしょう。 僕のようにパートナーがいない人は、仲の良い友達とご一緒に(笑)ゆったりくつろいだ2時間の滞在後、自由が丘を濡らした雨はすっかり上がっておりました。
どうか皆さんの人生が、この秋空のように晴れますように。
Plus véganiqueの詳細とアクセス
場所:東京都目黒区自由が丘1-19-23
電話:090-9823-8310
OPEN: 12:00~15:30 / 18:00~21:00
定休日: 火曜・水曜日
公式ページ:https://www.plus-veganique.com/
facebook:https://www.facebook.com/yasainokai/
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