倒産寸前のおもちゃ会社で石原裕次郎が演じるサラリーマン中部周平が奮闘する様子を描いたこの映画(昭和36年-1961年に公開)が何度観ても面白い。主人公をとりまく人々のキャラクターも最高で、往年の名俳優たちが魅力たっぷりに演じている。
なかでも周平が務める会社の社長さん(宇野重吉)、その社長さんが通う浅草の寿司屋の店主(桂小金治)、その娘のいさみ(芦川いずみ)、周平の同僚(長門裕之)、周平に目をかける関西の社長(東野英治郎)などなど、昭和を彩った大スターたちがユニークに、そして人間臭い登場人物たちの魅力が心深くまで刺さってくる。
あらすじはこんな感じだ。
その夜、周平はバー「サレム」で飲んだ後、女給の弘子に付き合わされて寿司屋に行くが、そこはいさみの実家。いさみは老田玩具の入社を懇願していたが、会社は経営危機に直面していて、それどころではない。それでも彼女は諦めず、周平と小助は興和玩具から二百万円を借りるため大阪へ向かう。
いさみも「資金が調達できたら雇って」と言い、画期的な玩具を使った提案をするが、社長は最初は難色を示す。しかし、帰り際に彼らがつぶやいたガスの話に興味を引かれたものの「二百万円は貸せない!」と言った手前、二人を引き留められなかった..
昭和30年代の日本は高度成長期と呼ばれていた通り、第二次世界大戦によって焼け野原になった悲惨な状況から、奇跡的な復興と経済発展を遂げた時代だ。わかりやすくこの映画を説明すると、三丁目の夕日のサラリーマン奮闘編といったところだ。みんなが豊かになろうと一生懸命に働いて生きている。
主人公たちが会社の資金を用立てするために大阪へ出張する時は、新幹線ではなく特急電車だ。まだ日本に新幹線が走っていなかった頃は、大阪城周辺は何もなかった様子も映画で見ることができる。そんな楽しみ方もできるのが昭和の映画の面白さのひとつだ。
また、男勝りに強気な寿司屋の娘いさみを演じている芦川いずみは、ナウシカやトトロの宮崎駿監督が大ファンで、作品のヒロインの元ネタとなっていることでも有名だ。いさみの性格は、紅の豚に出てくるフィオや、カリオストロの城のお姫様クラリスを彷彿とさせる。
そして、周平のように礼儀を重んじながらも腹に思ったことをしっかりと相手に伝える様子は、コミュニケーションが希薄で下手になっている現代人のお手本でもある。肝が座った様はとても爽快だし、かっこいい。自分にも人にも嘘がないのだ。
僕も、こんな生き方ができるように自分を鍛えていきたいと思う。
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